堀さんのサーフィンは、海に入る前のウォーミングアップとしてヨガを取り入れた準備体操でたっぷりと20分かけて入念に行います。
オンザビーチの気持ちいいストレッチです。
堀さん曰く、「海に入る前には必ずストレッチをしてください、体をある程度温めた状態からスムーズにサーフィンをはじめるためと、できるだけ怪我をしないようにするためです。サーフィンをやる際に、体が柔らかいということは、とても重要になってきます。ヨガも併せて、気持ちよくたっぷり時間かけてやりましょう・・・」。
堀さんのこだわりが感じられるビーチストレッチ、軽く額に汗がジワッと出てきます。
今日はいい感じでスタートできそうです!
ビーチでのヨガ・ストレッチが終わったら、目の前の自然環境、例えば波、潮流、干満、風、天気図について説明してくれます。特に、サーフィン初心者はどんな波のどこで練習するべきなのか、これが死ぬほど役に立ちました。
堀さんは、湘南辻堂でエコサーファー代表としてビーチクリーン活動を主催し、現在は南伊豆の弓ヶ浜に移住して南伊豆エコツアーを主催し、南伊豆ネイチャーガイドとして環境教育を実践しています。彼と海に入ると漁師の私でも目の前の海について多くのことを学びます。
その基礎知識がないと、サーフィンはとても危険なものになります。
堀さん曰く、「基本的な波、海のことについて説明します、波はどのようにして生まれるの?潮の満ち引きとサーフィンに良い波の関係、見知らぬビーチでの潮の流れの見分け方と安全確保、砂浜の地形と波の関係、低気圧と高気圧の配置と波の関係、初心者は波のどこで練習すればいいの?自分の身を守るため、他人にけがをさせないため、基本的な知識は必ず押さえておいてください。」
それからようやく海に入ります。
まずは、ロングボード使わずに自分の身体だけでボディーサーフィンに挑戦です。
実はこれ、最初から結構難しいのです。
次に来る波のブレーク地点を正確に予測し、そこまで素早く歩いていき、そのブレークに合わせて助走をつけて泳ぎだし、身体が波に乗ったら指先から足先までピンと反らして体全体をブレード(刃)のようにして波に食い込ませて波の斜面をボディーサーフィンする・・・。
これ、言葉ではちょっと伝わりにくいかもしれませんが、実際やってみるとかなり難しいです。でもこのステップの目的は、波に乗るという感覚を体でつかむということです。私は数回トライしてやっと成功しました。どこが難しいかというと、次の波のブレイク地点を正確に予測すること、そして、そのブレイクのタイミングに合わせて自分の身体に初速つけて泳ぎだすことです。
堀さん曰く、「波のどこのポジションに乗れば良いのか?波のパワーゾーンはどこなのか?どのタイミングで体を滑らせればよいのか?それを体で知ることがとても重要です。」
今振り返ってみると、確かに、ここにはとても重要なテーマが詰まっていました。私にとっては目からウロコのアドバイスでした。
ボディーサーフィンの次は、ロングボードを使って「ボディーボード乗り」をやってみます、パドリングはしません。
このステップのポイントは2つ。次に来る波がブレイクする地点を正確に予測し、そこに素早く移動してロングボードに飛び乗り、すぐに板と自分の重心を合わせることです。一見簡単そうですが、波のブレイク地点を予測するのが難しいです。私は数回目で成功しました。
堀さん曰く、「サーフボードに腹這いになった状態で、サーフボードが波に押される感覚をつかんでみてください。ボディサーフィンとは違い、「波に押されている」という感覚がサーフボードを通して体に伝わってきます。この波に押されている感覚、波の斜面(フェイス)を滑る感覚を体験したときに、はじめてサーフィンの醍醐味を予感することになります。」
ボディーボード乗りの次はパドリングです。
このステップは地味なんですが、サーフィン入門者にとっては(というか上級者にとっても)非常に重要なところです。
なぜか?
それはパドリングの速さがテイクオフの成功をもろに左右するからです。私のようなメタボ(あるいはデブ)体型にとっては、パドリング速度はなかなか上がらず非常に不利です。
ですが、姿勢、バランス、腕の振り、肩の上下、などの正確な動きが合体すると、自分でも「えっ?」と思うほどスピードが上がるのです。
堀さん曰く、「パドリングを行う際、サーフボードのどの位置に体を乗せるのか、腕の振り方、水をかく際の手の握り具合、上級者のパドリングフォーム、などを実際にやって見せますので、自分のパドリングと比較してみてください。たとえ、メタボ体型でも、パドリング速度を上げるコツがあります。」
パドリングの次は波待ち~方向転換です。
10ft(約3m)ある長くて重たいロングボードをどうやって瞬間的に180度方向転換させるのか?
それは、重心の素早い移動、両足の正確な回旋運動、左腕の水のかき、右腕の押し、腰のひねり、それらのタイミングが見事に合体するとキュイーンとロングボードが回ります。この回転動作でだいたいその人のレベルが判ってしまいます。
あのロングボードのキュイーンは私もず~っと不思議でした、一体どうやったらあんなに素早く回転するのか?
堀直也曰く、「ここを知っていると知っていないとでは、波をつかむ本数にかなりの差が開いてきます。波がつかめなければ、テイクオフの練習も出来ず、いつまでたっても上達しません。できるだけ早く、短い動作でうねり方向と直線になることが重要です。初めは海に落ちますが、コツがつかめれば数回でできるようになります、素早く回れるまで練習してください。」
方向転換の次は陸上サーフィンでテイクオフ動作の練習です。
ここまで来るのに3時間、私にはかなりきつい海上実技運動でしたが、これからが本番・・・なので気合いを入れ直します。
次の陸上サーフィンは、ハッキリ言ってハードでした。2月20日の真冬のビーチなのに大粒の汗が全身から吹き出します、ウェットスーツサウナ状態でした。正しいフォームで着地(テイクオフ)できるまで何度も何度もくり返し、その都度アドバイスしてくれました。
「前足の位置が違う!」「後足の角度が違う!」「もっとヒザを入れて!」「姿勢はもっと低く!」「肩の力は抜いて!」・・・まるでスピードスケート黒岩(ちょっと古い?)の練習のようで、51歳のオヤジはちょっとめまいが・・・。
「陸上でできないことは海上では絶対にできません」という堀直也の激が飛ぶ。
陸上サーフィンでのテイクオフ動作は体が覚えてくれるまでみっちりやりました。この動作の正確さと素早さがサーフィンのキモ中のキモです。ここで汗したことは必ず波の上でも生きてきます。51歳のメタボおやじも踏ん張りました。
堀さん曰く、「実際に海上でテイクオフの練習する前に、砂浜の上で練習をします。身長、体重、運動能力、サーフボードの長さ、波の性質によって、サーフボードの上に立つ位置は多少変わってきます。基本的なサーフィン初心者にベストな立ち位置を教えてあげます。陸上でできないことは海上では絶対にできませんので徹底的にやってみてください。」
環境教育家、エコサーファー代表、南伊豆エコツアー主催、南伊豆ネイチャーガイドの堀直也とのサーフィンは、今まで気がつかなかった海について、サーフィンについて、多くのことを学ぶことになりそうです。
南伊豆エコツアー&南伊豆ネイチャーガイドのサーフィンの心得(5)に続く