弓ヶ浜の加奈丸さんに同船して石廊沖の朝獲れスルメイカを手に入れたのでさっそくイカ刺身で一杯やることにする。
船上で活きしめされてクーラーボックスの海水の中で保冷された朝獲れスルメイカは、我が家のまな板の上でも吸盤が手に吸い付いてくるほど新鮮だ。
出刃で縦に切り、イカワタを抜き、表と裏の薄皮をはぐと、透明度のある真っ白な美しい身が現れてくる。
イカ身の繊維は横方向に走っているので、それと直角に縦方向に切り身を作っていく。
石廊沖のスルメイカの身は、肉厚で、甘みがあって極上である。天城の生わさびをサメ皮のおろしですって刺身醤油に入れる。これ以上のイカ刺しはそうないでしょう。
7月、8月、南伊豆、弓ヶ浜に旅行計画のある方はぜひこの「石廊崎沖のスルメイカ」のお刺身を旅行プランからはずさないでください、これぞ夏の南伊豆ブランドですから。
船上でスミを吐きながら釣れ上がってくるスルメイカをその場でさばいて、ワタ抜いて、海水に浸して、船上で半日干した「スルメイカの沖干し」は炭火であぶります。
炙るのであって、焼くのではありません、ここは細心の注意を払ってください。炭火から十分に距離をとってあぶると網の上で反り返ってきます。そしたら裏返してまたあぶります。
沖干しは、潮風でスルメイカを半乾き状態にしていますので、炭火で軽く両面あぶると、外側はパリッとしていても内側はジューシーな極上の干物が出来上がります。
焼き過ぎや焦がしは厳禁です。
船上の活きスルメイカを、醤油:本みりん=1:1 の醤油ダレにつけ込むと、驚いたスルメイカは一瞬にして腹一杯に醤油ダレを吸い込みます。それを、半冷凍状態にしてシャーベット状で食べるのが「スルメイカの沖漬け」です。
一般に売られているイカ沖漬けは、そのほとんどが死んでから長時間も醤油ダレに漬けられたもので、全身が醤油っぽくて私は嫌いです。
しかし、南伊豆漁師流の本物の活スルメイカの沖漬けは、短時間でワタ(内臓)だけに醤油ダレが回り、身にはそれほど醤油ダレが充満しないので、身はあっさりしていて、ワタにはタレが染み込み、これまた極上の一品なのです。
残念ながら、この本物の沖漬けは、南伊豆でも売っているところはありません。イカ漁師だけが作れる代物で数に限りがあるからです。
弓ヶ浜の加奈丸さんのように、イカ漁師でありながら居酒屋(うちのコテージのお隣にある『田辺』)も経営しているようなところでないと食べることはできません。
南伊豆の暑い夏の夜、冷たいスルメイカ沖漬け、冷酒で一杯。これぞ究極の酒飲みでしょう。
うちのカミさんのお気に入りは、イカワタのホイル蒸し。
新鮮なイカワタ、ゲソ、日本酒、味噌、バターをアルミホイルに入れて短時間炭火にかけます。全体が沸騰したらOK、半生ゲソとワタがいい感じでからみあってワタ好きにはたまりません。
具を食べ終わったら、残ったワタソースをご飯にぶっかけて食べるのが漁師流です。
さて、最後はやっぱりこれ、スルメイカの塩辛です。
これも市販のものはどうにも塩っぽくて好きになれませんが、これを朝獲れの石廊沖スルメイカで自作すると「塩辛」の概念が変わってしまうほど極上の味になります。
新鮮なワタをアラ塩に埋めて一晩冷蔵庫に入れます。翌日、しまったワタを日本酒で洗い、中味を取り出します。それに、肉厚のスルメイカ切り身を入れて混ぜ、パックにいれて冷蔵庫で発酵させます。1日1回、パックの中味全体をかき混ぜ空気を混入し発酵を促進させます。これを3日間くり返します。
これで手作りの塩辛が完成です。新鮮なスルメイカのワタは甘いのです、これに極上のイカ切り身が加わって、ほどよく発酵している・・・。
残念ながら、これも塩分少なく保存があまりできないので、市販されていません。沖漬け同様、イカ漁師とお友達になるしか食べる方法はありません。
幸運にもこの味を知ってしまったら・・・その時はこの南伊豆から離れられなくなるかも・・・
Good Luck !