太平洋に高気圧が張り出し、伊豆半島の沖が静かになってた。
この時期になると南伊豆では石廊沖でスルメイカ漁が始まる。南伊豆中のイカ漁船が「イカ場」と呼ばれる石廊崎沖の漁場に集結してスルメイカを海底150mから釣り上げる。
潮が良ければ毎日30隻以上のイカ漁船が集結して、海底を素早く移動するスルメイカの魚群を追っかけながら、常に集団行動で、イカヅノ仕掛けをドラムで落としたり巻き上げたりしている海上の風景は、まるで大間のまぐろ漁のような狩猟風景でとても壮観なものです。
うちのお隣さんの加奈丸さんもイカ漁師の一人で、私もこの時期になると同船して手間したり写真とったりして、オカズ(漁師言葉で手間のお駄賃のこと)で分けてもらったスルメイカで一杯やるのが楽しみなのです。
今朝7時前、加奈丸さんがスルメイカ漁の出港準備をしていたので、写真班として同船させてもらいました。
弓ヶ浜から出港して石廊沖に向かう途中、船長は漁師仲間の無線を聞きながら現在の状況を探っている、「今日は良くないみたい・・・」と一言つぶやいた。
エンジンの回転数2000をキープして快調に30分くらい航海すると石廊崎の沖に巨大な船団が見えてきた。今朝は40隻くらいか、南伊豆中のイカ漁船が集まっているらしい。
どの漁船も、イカ釣り専用の回転ドラムを2~4機搭載していて、忙しそうにイカヅノ仕掛けを上げ下げしている。
魚探で海底150m付近にイカの反応が出たら、搭載しているすべてのイカヅノ仕掛けを海底まで落とす、ドラムで自動巻き上げ、スルメイカを回収、そしてまた魚探で反応を探しながら移動、それの繰り返し。
スルメイカの魚群は常に移動しているので、海上の漁船団もそれにつれて集団移動、全員が同じ行動をとりながら移動しているのでなかなか壮観な風景です。
40隻の漁船がお互いにぶつかりそうなくらいすれすれまで接近するので、私のような気の弱い未熟な船長には、とてもこの船団には入れそうもない。腕のいい、屈強の漁師だけがこの石廊沖のスルメイカ漁に参加できるのです。
気温31度、水温27度、今日はスルメイカの魚群は散っていて、イカ場の船団も神子元方面にばらつき、漁師無線でどの船も苦戦しているのがわかる。
午前中いっぱいで加奈丸さんの水揚げは10kg前後、私には十分すぎると感じる戦歴だが、船長さんにはかなり物足りない漁獲だったようです。
私は今日は写真撮影で同乗させてもらいましたが、スルメイカが船上にスミを吐きながら釣り上げられる様子みていると、いてもたってもおられず、つい包丁とまな板を出してきて、釣れ上がったスルメイカをその場でさばいて、ワタを抜き、海水に浸し、船上に干して「スルメイカの沖干し」を作っていました。
石廊沖のスルメイカは、肉厚で、甘みがあって、間違い無く国内でも一級品です。とくにこの時期のエビアミのプランクトンを食べているスルメイカは絶品です。
これを、刺身、沖干し、沖漬け、イカワタのホイル蒸しで一杯やるのが南伊豆の漁師流です。
7月、8月、弓ヶ浜にくる方は、ぜひこの南伊豆ブランドの石廊崎沖スルメイカを食べて行ってください、これこそ本物の地魚グルメですから。