「あの5秒間」の感動のレッスン直後、シャワーを浴びて着替えた私は白浜マリーナのショップに直行して「これ下さい!」と初心者用の9’0”のロングボードを衝動的に購入していました。
個人レッスンではグロメットの9’6”ロングボードだったので、それよりちょっと短くて軽くて同じ形の9’0”を買ったのです。軽バンでの持ち運びも楽そうだったのでちょっと短い板にしたのでした。これがどれほど重大なミスであったのか、その時には知るよしもありませんでした。
今から想えば、あの時にちゃんと個人レッスンの先生やショップの店員さんに自分の目的(とにかくなるべく早く板の上に立てることができるサーフボードが欲しい!)を説明しておけば良かったとつくづく思います。
でもその時は「あの5秒間」の感動で体中が歓喜で震撼していましたので、そんなことは思いもよらず、とにかく自分のサーフボードを一刻も早くも手に入れて海に飛び込みたい衝動に駆られていました。
それが、その後1年間も続く悪夢の始まりでした。
それからは、9’0”のロングボードを車に入れていろんな海に入りまくりました。白浜、多々戸浜、入田浜、大浜、そして目の前の弓ヶ浜。
最初はいろいろなサーフポイントに入水して初心者なりに他のサーファー見学などで楽しかったのですが、だんだん焦りが出てきました。
「あれえ、ちょっと変だぞ、あの個人レッスンでの感覚とちょっと違うぞ、あの白浜のあの波だったから良かったのかなあ?、ぜんぜん波に乗れないんですけど・・・?」。
いくら一生懸命パドリングしてもまったく波をキャッチきない・・・なぜ?何があの時と違うの?
海の中で、同じ場所にいる周りのサーファーたちは、波待ちからいとも簡単にクルッと方向転換して、ちょっとパドリングしたらいとも簡単に波をキャッチして、滑り出したロングボードの上にいとも簡単に立ち上がってテイクオフに成功しているのです。
彼らと同じ波、同じ場所、同じくらいの長さのロングボードなのに、何で俺だけ波に取り残されていくの?まあ立てなくてもいいけど、何で波をキャッチできないの?何で俺だけ波に置いていかれるの?何で?何で?
どこのサーフポイントに入水しても、いつも俺だけ置いてけぼり、一体何が悪いの?何が違うの?苦悩の日々が3ヶ月間続きました。
とりあえずサーフィンの上達本を本屋で買いあさり、パソコンでyoutubeを見まくり、ひたすら独学でサーフィン研究しながら、実際の海上で自分と周りのサーファーとの動きの違いを観察することに専念しました。1日中海に浮かびながらそんなことばっかりやっていました。
そして一つの決定的な違いを発見することができました。パドリングしているときのロングボードの速度でした。
波待ちからロングボードを方向転換してパドリング開始、そのパドリングによってサーフボードが前進する速度が周りのサーファーよりも決定的に遅いことがわかってきました。
それは沖に向かうゲッティングアウトするときも、そのパドリングスピードの差が歴然でした。同じ地点からアウト目指しても、私が5m進む間に隣のサーファーは10m以上進んでいます。私は目一杯に手や腕を振り回すのですが、ぜんぜんサーフボードが前に進んで行かないのです。
俺、パドリング、遅すぎ。
身長168cm、体重81kg、50歳で始めたロングボードの日記(その3)に続く・・・